■<夢想流こそ我が命>第7話  「歩行法」

僕は現在、事務所の二階、洋装衣装の倉庫の片隅で寝泊りしてます。
社長でありながら、まるで宿直の泊まり番みたいな暮らしなんですが、これがまた、もの思いにふけったり空想の世界に遊ぶには、うってつけの住処なんです。

ただ、トイレが地下にあるので、夜中に目が覚めて階段を二箇所、上り下りしなければなりません。最初は、なんとまあ不都合なと思っていましたが、これはこれで、階段を楽に上り下りするにはいかにすべきか?ということを考える機会になりました。深夜ですから、とにかく静かに昇降しなければなりません。

色々試しているうち、これは正しい歩行と同じ問題なんだと気が付きました。降りる時は、ぎりぎりまで後ろの足に重心をのせ、前の足に重心が移った瞬間、体は下の段に移動し、前だった足が後ろの足となって体重を支えてます。言葉で言うとまだるこしいですが、これはたいていの人が普通にやってることです。

もともと、階段を降りるのは上るよりは楽なわけです。それで、上る時、楽にするにはどうするか?そうだ!階段を下りるときの重心移動と同じようにやれば良いのでは?とにかく、常に後ろの足に体重を乗せた状態を保ちながら上がって行く、それには、前の足を高く上げ(体重は下の段の後ろ足にかかっている)、足を上の段に静かにつけたら、すかさず重心移動。すると、その足は瞬時に後ろ足となって体重を支えてる状態になります。要するに、上る時も降りる時も。常に後ろ足に体重が乗っての状態を保つわけです。

上る時に疲れるのは、まるで、縄はしごをたぐっていくように、前の足に体重を乗せながら体を引っ張り挙げるからなんでした。筋肉でよっこいしょと力を入れるから辛いわけです。要点は、重心移動の不思議です。筋肉ではなく、瞬発力のはずみです。これは、たぶん、初めて二本足歩行をする幼児も同じ要領で歩いてるはずです。しかしまあ、やはり、言葉で表現するのはややこしいですね。

とにかく、この歩行法を応用すれば、重いものを担いで平面を歩く時にも役に立ちます。それから、後ろ歩きの要領も同じです。真っ暗闇での安全な歩行法も同じ。そう、ちんどん屋の歩き方など正に!そうなんです。

だいたい、踵のある靴での歩き方は、踵から着地した前足を手繰り寄せる、いわゆる歩伏前進みたいになってることが多いですね。トカゲの前進みたいに。これが間違いの始まりなんです。スケートも後ろ足で蹴るでしょう。氷上をカーリングの錘が滑っていきますよね、あの感じで体を滑らす、重心を移動させていくのが楽な歩行の秘訣です。

今回、ちょっとわかり難い話になってしまいましたがすいません。
とりあえず、夜中に階段を二つも上り下りする辛さもまた楽しからずやといったところでしょうか。

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本日の社長日記
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